途端に僕は恥ずかしくなる。
雑居ビルの屋上に不法侵入した挙げ句、宇宙人でもない男に宇宙人かと聞いてしまった。
よく考えると、意味がわからない。
僕は一体、何をしているのだろう。
少し我に帰ると何故か焦りが出てきて汗が流れる。
もう気温はそんなに暑くはないはずなのに。
しかしこの男の素性と目的も、もっと意味がわからないので、僕は彼に聞く。
一度言葉を交わしたためか、不思議と恐怖は訪れなかった。
「あの、では僕に何かご用なのでしょうか。不法侵入の件であれば、ごめんなさい。もう止めますので」
ナスガキは答える。
「いえ、たぶんなのですが、あなた、宇宙人を呼んでいますよね? 何度かお見かけしたので。ビルの屋上でやることなんて、それしかないですものね」
……一体、何処から見られていたのだろう。
僕は疑問に思ったが、ビルの屋上でやることは別に他にもあるだろう、とも思い、すぐに些細な疑問は上書きされた。
僕が少し黙っていると、ナスガキは続けた。
「もしよろしければ、お力になれると思います」
僕にはやっぱり意味がわからなかった。
「えぇと、よくわかりません。力になれるって、何に?」
「宇宙人でしたら、お貸しすることが出来ますよ」
……よくわからないが、宇宙人が借りられるものだと、初めて知った。
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