上空、帰る

上空、帰る

上空、帰る⑪(終)

前ページ    船は落下速度を抑え、水平飛行に移る。  僕は携帯電話の電波状況を確認し、電話を掛けた。   「……眼科、終わった?」  通話が始まるとほぼ同時に、彼女は言う。    ...
上空、帰る

上空、帰る⑩

前ページ    自室で必要な荷だけを簡単にまとめ、エレベーターで最下層に降りる。  最下層は緊急脱出用のハッチだけしかなく、エレベーターを降りると、目の前には小型の脱出艇が肩身狭そうに待っていた。   ...
上空、帰る

上空、帰る⑨

前ページ   「それに」  彼は続ける。 「お前がどれだけ何を頑張っても、結果は変わらない。そこは理解と覚悟をしておいたほうがいい」 「何もしませんよ、僕は。誰にも言いませんし、逃げもしない。故郷の人...
上空、帰る

上空、帰る⑧

前ページ    僕は続けた。 「異星人である僕をどう思うかなんてわかりません。わからないし、興味もない。この先、僕の素性を告白するかどうかも決めていない。でも、彼女は僕を祝いたいと言ってくれたんです、今、僕を。他...
上空、帰る

上空、帰る⑦

前ページ    彼は新しい煙草を一吸いし、眉間に少し皺を寄せながら煙を吐き出す。気持ち良いのかどうか、表情からではよくわからない。  煙を吐き切ると、彼は続けた。 「ということで地球人は殲滅しなければならん...
上空、帰る

上空、帰る⑥

前ページ   「それはわかってますよ。受け入れてくれない以上、殲滅する他ないです。でも何ででしょうね? 皆、良い人なのに」 「まぁ、良い人ばかりだとは俺も思うよ。でも個々人では良い人だけど、彼等は群れると妙に他集...
上空、帰る

上空、帰る⑤

前ページ   「いや、まぁ、姿形はほぼ同じだからさ、そういうこともあるのかもしれないけどさ……でも理性というものがさ、許さないと思うんだよ、俺はさ、普通」  彼は狼狽している。でも、別にそんなに変な事だとは、僕は...
上空、帰る

上空、帰る④

前ページ   「いやもう無理だけど、何で? 何かあったの?」  彼は僕に聞いてくる。一応、理由くらいは聞いてくれる時点で、やっぱり悪い人ではない。悪い人ではないが、もう少しくらい融通を効かせてくれたなら、もっと悪...
上空、帰る

上空、帰る③

前ページ    エレベーターを降り、廊下の突き当たりの喫煙室に進むと、やはり彼はいた。ガラス戸の向こうで、旨そうに煙を吐き出している姿が見える。  彼は灰皿の前で天井を見つめ、だらしなく開いた大口から白い煙を立ち...
上空、帰る

上空、帰る②

前ページ    しかし、どうしたものだろうか。    まさか今日を僕の誕生日にしていたとは、完全に忘れていた。暫く会えていないこともあり、少し怒らせてしまっている気もする。でも、それでも祝ってくれるというな...
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