上空、帰る④

上空、帰る



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「いやもう無理だけど、何で? 何かあったの?」

 彼は僕に聞いてくる。一応、理由くらいは聞いてくれる時点で、やっぱり悪い人ではない。悪い人ではないが、もう少しくらい融通を効かせてくれたなら、もっと悪い人ではない。

「いや、彼女がですね……僕の誕生日を祝ってくれると言うんですよ」

 僕は正直に答えた。おそらく、現状で彼は引き返すつもりはほぼ無いのだろうから、下手に嘘をつく理由も無い。

 彼は暫く中空を見つめ、答えた。

 

「今日誕生日だったのか? いや、それはおめでとう」

「ありがとうございます」

 でも祝ってほしいのは彼ではなく、彼女なのだ。

 また少し間を空けて、彼はぼんやりと言う。

 

「いや、というより、なんで彼女がいるのさ……」

 ……なんだか、とても失礼なことを言われた気がした。

「そんなにモテない感じに見えます?」

 僕は少し異を唱えた。

「いや、そうではなく。どうして彼女なんか作ったんだよ……」

 どうして、と聞かれても困る。

「いや、とても良い子なんですよ」

「いやいやいや、そういうことでもなく。彼女なんか作っちゃダメだろ、普通に考えて。普通に考えてくれ、今更なのかもしれないけど」

 彼の言いたいことも何となくわかるけど、僕にも反論はある。

「でも地球に潜伏調査するにあたり、地球人に紛れて地球人のように暮らせ、という指示だったので、3年間地球人のように暮らしていたら、彼女を好きになったんです」

「いや、うん、でも、えぇ……?」

 

 上司は理解してくれていないようだが、好きになってしまったので、仕方がない。そこを今更否定されても、僕も困る。



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