「いやもう無理だけど、何で? 何かあったの?」
彼は僕に聞いてくる。一応、理由くらいは聞いてくれる時点で、やっぱり悪い人ではない。悪い人ではないが、もう少しくらい融通を効かせてくれたなら、もっと悪い人ではない。
「いや、彼女がですね……僕の誕生日を祝ってくれると言うんですよ」
僕は正直に答えた。おそらく、現状で彼は引き返すつもりはほぼ無いのだろうから、下手に嘘をつく理由も無い。
彼は暫く中空を見つめ、答えた。
「今日誕生日だったのか? いや、それはおめでとう」
「ありがとうございます」
でも祝ってほしいのは彼ではなく、彼女なのだ。
また少し間を空けて、彼はぼんやりと言う。
「いや、というより、なんで彼女がいるのさ……」
……なんだか、とても失礼なことを言われた気がした。
「そんなにモテない感じに見えます?」
僕は少し異を唱えた。
「いや、そうではなく。どうして彼女なんか作ったんだよ……」
どうして、と聞かれても困る。
「いや、とても良い子なんですよ」
「いやいやいや、そういうことでもなく。彼女なんか作っちゃダメだろ、普通に考えて。普通に考えてくれ、今更なのかもしれないけど」
彼の言いたいことも何となくわかるけど、僕にも反論はある。
「でも地球に潜伏調査するにあたり、地球人に紛れて地球人のように暮らせ、という指示だったので、3年間地球人のように暮らしていたら、彼女を好きになったんです」
「いや、うん、でも、えぇ……?」
上司は理解してくれていないようだが、好きになってしまったので、仕方がない。そこを今更否定されても、僕も困る。
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