上空、帰る⑪(終)

上空、帰る



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 船は落下速度を抑え、水平飛行に移る。

 僕は携帯電話の電波状況を確認し、電話を掛けた。

 

「……眼科、終わった?」

 通話が始まるとほぼ同時に、彼女は言う。

 

 僕は返す。

「そうだね、ちょっと時間が掛かったけど、終わったと思う」

 

「……ねぇ、今どこにいるの? 結構心配してるんだよ」

 僕は操縦席に表示された地図を見渡す。

「どこだろう。アメリカ、もしくはアフリカくらいかな……」

「またそうやってはぐらかす…… 深くは聞かないけど、もう大丈夫なの?」

 彼はきちんと掃除をしたのだろうか。

 どういうわけか、今更そんなことが心配になってきたけど、きっと彼は掃除してくれていると、すぐに気持ちに蓋をした。

「あぁ、そうだね…… すぐに帰るから、盛大に祝ってよ」

「……わかった。任せてよ」

 

 彼女達からすれば、僕は大罪人なのだと思う。

 卑怯者とも言えるかもしれない。

 でも少なくとも後悔は無いし、僕はもう選んで、もう決めた。

 少しだけ間をおいて、僕は彼女に言う。

 

「これからは、死ぬまで一緒だよ」

 

 きっとそれ以上は、望んではいけない。

 鮮やかに染まる朱色の雲の向こうに、緩やかな帳が待っていた。

 

 

〈了〉



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