味覚の砂漠が狂おしい⑥

味覚の砂漠が狂おしい



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 確かこの先を曲がると定食屋があったはず。

 そこでいい。

 わりともう、何でもいい。

 

 腹を満たすことを優先しだした事に少なからず本末転倒感は感じたが、そもそも少し早く仕事が終わっただけで別に何か良い事があったわけでも何かの記念日でも無いわけで、であればもう腹さえ満たせば何でもいい気が、それこそ腹の底から沸き上がって、食べ物の前にそんな気持ちで腹が満たされてしまうのではないかと、一抹の恐怖すら覚えたのだ。

 だからもう、焼き魚定食でもコロッケでもなんでもいい。無難なもので構わないので、早く僕の栄養になっておくれ。

 

 交差点を右に曲がり、目当ての定食屋の姿を拝む。営業時間は知らないが、どうか店主が休憩無しで働き続ける鉄人であることを祈る。

 

 『売り店舗』

 

 潰れていた。

 

 入口前の立て看板に、大きく、そう書かれている。普段はさっきの交差点を直進するので、知らなかった。

 

 ――何なんだ一体。



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