一週間後、滲み寄る⑮

一週間後、滲み寄る



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「いやね、さっきも言いましたけど、税金が急に値上がったんですよ。あと数ヶ月のうちに払わないと焼かれるようで、蓄えがあまりないもので焦ってるんです」

 もうこの際彼が本気なのかどうかはさておいて、彼の愚痴に乗る。

「どの界隈も同じですね。偉い奴らは弱者から吸い取ることしか考えていない。やはりこの世は転覆すべきです」

 僕が話に乗ると、ナスガキは続ける。

「いや、本当に。そう言っていただけると、少しこの商売にも自信が出てきました」

 彼のやる気が上がってきた。良い傾向かもしれない。

 このまま相談に乗る振りをして、価格設定やら営業先に口を出し、共同事業ということで上手いことノベルティを引き出したい。

 

 僕は再び愚痴に乗る。

「なんなんでしょうね、偉い奴らは。庶民のことなんていつも無視する。そもそもそんなに税金を集めて、一体何に使うのか怪しいもんですね」

「ですよね。私ら庶民には、何の説明も無いんですよ。UFOを増台するから金が要ると噂には聞きましたが、怪しいものです。別にUFOなんて地球で普通に暮らす分にはそんなに要らないと思うんです」

 言葉を受け、僕はこの先、誘導をどう展開するか少し考えた。

 しかし、考えていたら、彼の言葉に僕は少し引っ掛かる。

 

 ――UFOを増台。

 

 僕は考えが止まる。

 なんだろう。少し、気になる。

 

 ナスガキは続けた。

「それに我々は8千万人もいるんですから、金持ちから取ればいいのに、何を考えてるんでしょう」

 

 ――8千万人。

 

 なんだか、先程の話と少しリンクする気がする。

 しかし僕の思考とは裏腹に、ナスガキの愚痴は止まらない。

 

「それに複製技術を使えば人口なんてあっという間に増えます。人を増やして生産能力を上げれば済むでしょうに」

 

 ――複製技術。

 

 僕は少し、嫌な妄想が膨らんだ。



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