「いやね、さっきも言いましたけど、税金が急に値上がったんですよ。あと数ヶ月のうちに払わないと焼かれるようで、蓄えがあまりないもので焦ってるんです」
もうこの際彼が本気なのかどうかはさておいて、彼の愚痴に乗る。
「どの界隈も同じですね。偉い奴らは弱者から吸い取ることしか考えていない。やはりこの世は転覆すべきです」
僕が話に乗ると、ナスガキは続ける。
「いや、本当に。そう言っていただけると、少しこの商売にも自信が出てきました」
彼のやる気が上がってきた。良い傾向かもしれない。
このまま相談に乗る振りをして、価格設定やら営業先に口を出し、共同事業ということで上手いことノベルティを引き出したい。
僕は再び愚痴に乗る。
「なんなんでしょうね、偉い奴らは。庶民のことなんていつも無視する。そもそもそんなに税金を集めて、一体何に使うのか怪しいもんですね」
「ですよね。私ら庶民には、何の説明も無いんですよ。UFOを増台するから金が要ると噂には聞きましたが、怪しいものです。別にUFOなんて地球で普通に暮らす分にはそんなに要らないと思うんです」
言葉を受け、僕はこの先、誘導をどう展開するか少し考えた。
しかし、考えていたら、彼の言葉に僕は少し引っ掛かる。
――UFOを増台。
僕は考えが止まる。
なんだろう。少し、気になる。
ナスガキは続けた。
「それに我々は8千万人もいるんですから、金持ちから取ればいいのに、何を考えてるんでしょう」
――8千万人。
なんだか、先程の話と少しリンクする気がする。
しかし僕の思考とは裏腹に、ナスガキの愚痴は止まらない。
「それに複製技術を使えば人口なんてあっという間に増えます。人を増やして生産能力を上げれば済むでしょうに」
――複製技術。
僕は少し、嫌な妄想が膨らんだ。
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