大まかにして朗らかな見解を優しさと共に⑦(終)

大まかにして朗らかな見解を優しさと共に



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 次に意識が戻った時には、既に部屋の中に日が射し込んでいた。寝起きの頭でぼんやりと部屋を眺めると、友人はテレビを観ながら惚けている。眠れたかどうか確認すると、あまり眠れなかったと彼は答えた。コタツしか無くて申し訳なかった、と伝えると、そうじゃない、と返ってきた。もしかしたら彼もまた僕と同様に、他人の近くでは眠れない人間なのかもしれない。

 夜中に倒れた置時計を再び立て掛ける。時刻は8時少し前。友人がそろそろ帰ると言い出した。殺虫剤を購入するためのホームセンターはまだ開店前だろうし、せっかくなのでのんびりしていけよ、と言うと、大丈夫、と返してくる。一体何が大丈夫なのかはわからないが、そう言うと彼はそそくさと帰っていった。

 * * *

 翌週。

 どうしようもなく焦った僕は、部屋着のまま彼のアパートへと駆け込んだ。

「殺虫剤に余りがあれば譲ってほしい」

 走り口調で彼に懇願する。

「構わないけど……」

 殺虫剤を譲ってくれる。ありがたい。やはり人は人の優しさによって救われる。

「でも霊的なものに効くかは知らないぞ……」

「いや、俺の家にもムカデがいたんだ」

 ムカデに咬まれたら大変だ。

 それだけは、なんとしてでも避けたい。

〈了〉



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