大まかにして朗らかな見解を優しさと共に④

大まかにして朗らかな見解を優しさと共に



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 会社の入口前の百葉箱から2匹のドジョウが孵化したので車が合体して女子高生が銀行強盗を企み風呂の栓が外れてしまうかもしれない。

 そんな事を真剣に悩みだした頃、何かが倒れる濁音に再び引き起こされそうになるが、聞き慣れた環境音にいちいち反応するほどの浅瀬にいるわけではなかったので、辛うじて意識を再度沈めることに成功する。

「何の音だ……?」

 成功したはずだったのに。

「部屋の中で何か倒れた音がしたよな……結構重い音……地震でもないのに」

 また彼が呻きだしたが、僕の頭にはまだ霞が掛かっている。

「鳴るよ音くらい……ほぼ毎日何らかは倒れるよ、この部屋は、このくらいの時間になると。だから大丈夫」

 多少何かが倒れたからといって何だというのか。

 今の音は置時計か何かだと思うが、別に何でもいいし、どうでもいい。まだ今ならすぐに眠れる気がする。早く寝直そう。

「毎日ってお前……ポルターガイスト的なものじゃないのか、これ。ヤバくないか?」

 何だか彼は焦っているようだ。しかしよくもまぁ何かが倒れたくらいでそこまで怯えられるものだ。

「いや知らんけどさ……たまに何かが倒れるくらい気にしなければ済むだろ。何かが壊れるくらい激しいものではないし。時計とかが倒れるだけ。毎日の事だからもう俺は慣れたよ、気にするな。気にするから気になるんだ。外の県道の音のほうが俺はよっぽどうるさいよ。気にするな」

 入眠を妨げられた苛立ちで、つい口数多く話してしまった。口が回るとまた意識が戻ってくる。また寝直しだ。勘弁してくれ。

「いや慣れたってお前……大丈夫なのかこれ?」

 うるせえな……

「大丈夫だって……明日直せば元に戻るだろ」

「いや、しかし……」

 あぁ、もう……

「ムカデよりマシだろ?  ムカデは咬むぞ。これは咬まない」

「そうかな……まぁ、そうかもな。戻せばいいもんな。ムカデよりはマシかもな……」

 ようやく解ってくれた。

「害はないから。おやすみ」

「……おやすみ」

 確実に眠れる気配があったのに。

 イライラしたらまた目が冴えてきた。いつになったら眠りに就けるんだろう。頼むから多少の事は気にせず黙っていてくれ。とにかく僕は眠るのが下手なので一度機会を逃すと次が遠いんだ。

 苛立つ気持ちを収めねばと思いながらも、沸き立つ怒りは上手く収束しない。それでも朝まで寝付けず悶々としたくはないので、僕は再び意識を閉ざすために目を閉じた。



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