「あの、どうして痛むのか、わかりますか?」
僕は少し話を聞いてみる。
「ちょっと前に、他の墓にお供えしてあったお酒を飲んだら、それから痛む! あれ、腐ってやがったよ、ふざけんなよ!」
わりと自業自得だとは思った。
もう夏場も近く、すぐ腐るに決まっている。
改めて幽霊を見ると、ストライプのポロシャツに灰色のチノパンツという出で立ち。服装から見るに、たぶん昔の人間ではなく、最近の人だ。最近の若者を見直したばかりなのに、最近の幽霊に呆れさせられるとは思っていなかった。
節操の無い人間は、幽霊になろうと報いがあるわけで、やはり世の中は良く出来ている。
「いや、何とかしてあげたいのですが、どうしたものか……」
僕は声を出して困る。
この幽霊の腹痛が治まれば、きっと呻き声も止むわけで、つまりこの仕事は完了だと思うのだが、今まで出会った幽霊は皆さん健康だったので、僕には対処方法がわからない。
わからないが、このまま放っておくわけにもいかなかった。
折角見直した最近の若者に、最近の幽霊と最近の若者とはもう呼べない年齢の人間が迷惑を掛けるわけにはいかない。
僕は少し考えて、とりあえず幽霊に声を掛ける。
「じゃあまぁ、とりあえず胃薬買ってきますんで、ちょっと待ってて下さい」
「治るなら何でもいいよ! 頼む!」
治るかどうかはわからない。
「あ、あと幽霊さん、お名前は? 一応領収書切りますよ」
「ナスタニ! いやでも金無い! でも買ってきて!」
「わかりました」
僕はナスタニさんに薬を買うべく、24時間営業のドラッグストアへと向かった。
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