「君、俺が見えるんだろ!? だったら頼むから医者を呼んでくれ!」
幽霊はしきりに、がなりたてる。
しかし、僕は困る。
――医者を連れてきても、幽霊が見えないと、どうしようもない。
そう思ったので、僕は返す。
「いや、ちょっと申し訳ないんですが、幽霊と触れあえる医者に心当たりがなく……」
「何でもいいから医者を呼べ!」
――だから医者を呼んでも処置できないというのに。
「あの、どうされたんですか? なんとかするにも、どうされたかがわからないんです」
「いや頼むよ。腹が痛いんだ。夜になると、腹が痛むんだ。死ぬかもしれない」
――無粋な言葉で遮るのは止めておいたが、たぶんもう死んでいる。
というより、幽霊に腹痛なんていう概念があるのを、僕は初めて知った。祖母からは幽霊は痛みを感じないと聞いたことがあるのだが、そうでもなかったのだろうか。
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