おろすか、切るか、へし折るか②

おろすか、切るか、へし折るか



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 僕には昔から霊感がある。

 霊感というか、幽霊と話が出来る。

 僕の祖母も幽霊と話せたらしく、生前は霊媒師を生業にしていたので、もしかしたら遺伝的なものなのかもしれない。

 むしろ考えてみれば、どうして今までそっちの道を選ばずに過酷なサラリーマン道を進んでいたのか、今までがおかしかった気もしてくる。

 今こそ生まれつき備わったこの能力を活かし、無職から華麗に脱却すべきだと思ったのは、むしろ遅すぎたくらいだ。

 

 なので除霊師になるための修行などは一切省いた。修行などせずとも僕には生まれつき備わった霊感があるし、たぶん大丈夫なのだ。そもそも修行が必要なものかどうかもわからないし、誰に師事を受ければいいのかもわからないから、それはもう仕方がない。

 それに、祖母の仕事も何度か眺めたことがあるので、たぶんなんとかなる。

 祖母は適当に幽霊を叱りつけ、あるいは適当に説得して成仏させれば除霊となると言っていたので、そんな感じにすれば除霊はできるはずだ。

 

 除霊業立ち上げに際して、僕は仲の良い友人を頼ることにする。

 友人にインターネット上のサイトや、スマートフォン用のアプリを作成してもらい、そこに徐霊の依頼が訪れるのを暫く待った。

 いわゆる個人事業主となる手続きも僕にはさっぱりわからなかったが、その友人が詳しかったため事なきを得た。たぶん独力であれば早々に諦めている。持つべきものはやはり有能な友人だ。

 

 

 サイトを立ち上げてから2日。

 

 幸運にも依頼はすぐに舞い込んだ。

 僕は世の中の甘さを歓迎する。

 

 しかし、よく考えればこんな得体も知れない除霊師に依頼する感覚も普通では無い気もするので、素性もわからぬその依頼主に対し、僕は幽霊なんかよりもよほど恐怖を覚えてしまった。



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