戦うのだろうか。これは流石に無理なのではないか。タダシは老師Aの危機を感じた。
だがそれでも、タダシは格闘術の可能性を信じたかった。槍を前にしても怯まず立ち向かった老師A。逆境にも負けず武器という暗愚な企みを打ち破った老師A。タダシはまた老師Aが奇跡を起こすことを、心から願った。
老師達は構えた。
静寂が流れる。
号砲。
破裂音が鳴り響く。
老師Aは吹き飛んだ。
やっぱり拳銃には勝てない。残念ではあるが、タダシは現実を受け止めた。
受け止めて、タダシは少し考えた。
……よく考えたら、これはもう事件じゃないか?
そう考え始めた頃合いで、老師Aはゆっくりと起き上がり、何事も無かったかのようにピストル老師と握手をしていた。やはり達人は鍛え方が違う。ピストルには勝てないまでも、ピストルごときで死ぬわけがない。タダシは老師Aが示した無手の可能性に感謝し、天を仰いだ。
再びタダシが公園へ目を戻すと、老師Aは公園の木々陰へと去っていった。
そして入れ替わりに新たな老人が現れた。
赤い袴の老師。
手にはロケットランチャーが握られていた。
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