七人の老師⑦

七人の老師



前ページ

 

 戦うのだろうか。これは流石に無理なのではないか。タダシは老師Aの危機を感じた。

 だがそれでも、タダシは格闘術の可能性を信じたかった。槍を前にしても怯まず立ち向かった老師A。逆境にも負けず武器という暗愚な企みを打ち破った老師A。タダシはまた老師Aが奇跡を起こすことを、心から願った。

 

 老師達は構えた。

 静寂が流れる。

 

 号砲。

 破裂音が鳴り響く。

 

 老師Aは吹き飛んだ。

 

 やっぱり拳銃には勝てない。残念ではあるが、タダシは現実を受け止めた。

 受け止めて、タダシは少し考えた。

 

 ……よく考えたら、これはもう事件じゃないか?

 

 そう考え始めた頃合いで、老師Aはゆっくりと起き上がり、何事も無かったかのようにピストル老師と握手をしていた。やはり達人は鍛え方が違う。ピストルには勝てないまでも、ピストルごときで死ぬわけがない。タダシは老師Aが示した無手の可能性に感謝し、天を仰いだ。

 再びタダシが公園へ目を戻すと、老師Aは公園の木々陰へと去っていった。

 そして入れ替わりに新たな老人が現れた。

 赤い袴の老師。

 手にはロケットランチャーが握られていた。



次ページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました