数秒だろうか、タダシには長く感じたが、少しすると老師Bはゆっくりと起き上がり、老師Aはその側へと歩みを詰める。2人は熱い握手を交わし、抱擁する。
なんて美しいんだろう。
タダシの心は揺れ動いた。
こんなに美しい光景に、結果だけで優劣がつけられるはずがない。タダシは誰にも聞こえないであろう拍手を心の中で打ち鳴らした。
抱擁した老師達は少し離れ、お辞儀をする。頭を上げた老師Bは公園の広場から去り、やがてタダシの視界から消えていった。
今日はなんて良い日なんだろう。
ありがとう。最強を目指したであろう2人の男の結末に、タダシは天を仰ぎ感謝した。
再びタダシは公園を見下ろす。何故か老師Aはまだ同じ場所に居る。
まだ何かあるのだろうか。
タダシが疑問に思い始めた頃、公園の木々の陰から新たな老人が現れた。
新たな老人も老師Aとほぼ同じ外見をしている。違いは袴の色。この老人は薄黄色の袴を履いており、その手には何か長いものが見える。
人間2人分の長さはあろうかという棒。先は鋭く光沢を放っている。
槍だ。タダシは理解する。
槍を持った老師が現れた。
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