七人の老師②

七人の老師



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 白く長い髭。禿げ上がった頭。

 

 この人達は仙人です、と言われれば、迷わず信じてしまうような、そんな外見。老人には似つかわしくない爆裂的な筋肉の量だけが仙人らしさからかけ離れ、違和感を放っている。しかしその鍛え抜かれた肉体に、タダシは長く激しい研鑽の歴史を感じた。

 

 2人の見た目は、少なくともタダシには全く同じに見える。

 上半身裸の袴履き。唯一の違いは2人が履いている袴の色の違いか。白い袴と薄水色の袴。便宜上、タダシは白袴を老師A、薄水色を老師Bと心の中で名付けた。

 

 タダシは格闘技に明るくはないが、2人の戦いは明らかに素人のそれではなく、合理的で哲学的な体の流れを体現したものに見えた。

 直線的で力強い動きの老師A。流れるように曲線を描く老師B。対極的な両者の動きはタダシの焦点を惹き付け、なおかつ破滅的に美しい。タダシは暴力的であるはずのその光景の中に、ある種の芸術性まで感じてしまう。

 タダシには老師Aの背景に空手が、老師Bに中国拳法が重なって見えた。



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