想いを繋げ、カムチャッカ⑨(終)

想いを繋げ、カムチャッカ



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 バンダル・スリブ・ガワンとバンダル・スリ・ブガワン。

 この違いは大きい。

 語感が全然違う。

 

 となると、もう僕はバンダル・スリ・ブガワンに失望するしかない。

 ……いやでも、ブガワンはブガワンでアリかもしれない。むしろブガワンだけ切り取れば、とても心地良い響きではなかろうか。

 僕は一瞬、迷う。

 

 ……いやしかし、うぅん。

 正直、微妙なところだ。

 どちらでも魅惑的ではあるのだが、どちらでもいいということは、つまり完璧ではない。

 どうせなら完璧な語感を誇る地域へ行くべきなのではないか。

 そう思ってまた『暖かい地域』で検索するが、ブガワン以上に僕の琴線に触れる名は出てこなかった。

 

 どうしようか。

 どこかで妥協すべきなのだろうが、しかし、できれば妥協なんてしたくはない。

 であれば、もういっそ暖かくなくとも、語感がよければ何処でもいいのではないだろうか。

 よく考えれば別に暖かい所に行かなくとも、要は暖かさを感じればいいわけで、むしろそういう意味で言えば寒い所でサウナとかに入ったほうが、ある意味では暖かさに対してよりありがたみを感じるのかもしれない。

 

 ――きっとそうだ。そうに違いない。

 

 むしろもう、寒いところへ行けばいいのだ。

 そう思い、僕は『寒い地域』で検索してみた。

 

 目が止まる。

 

 カムチャッカ半島

 

 ……なんて素敵な響きだろうか。

 

 

〈了〉



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