恥ずかしい。
紅茶の名前は全部産地の名前だとばかり思い込んでいたために、僕はさっき『紅茶の本場、オレンジ・ペコー』なんて心の中で呟いてしまった。
冷静に考えたら、そんなメルヘンな地名がこの殺伐とした現代社会にあるはずがないのに、深く考えずに呟いてしまった。なんということだろう。
また恥ずかしくなってきた。
また裏切られた。
オレンジ・ペコーは僕の心を裏切った。
となるともうオレンジ・ペコー(セカンド・フラッシュ)には何の興味もない。僕に恥をかかせ裏切った紅茶など、幸せのために|摂《と》る、という嗜好品の定義に反する。そもそも幸せになりたいのであれば格好つけて紅茶など飲まなくとも、なにか甘い物でも口の中に放り込んでおけば良い。
そう考えていると、何か甘い物を食べたくて仕方がなくなってきた。
僕はまた、スマートフォンで『甘い物』と検索してみる。
検索結果を暫く眺めていると、僕の意識は1つの単語で引っ掛かった。
クイニーアマン ……なんて甘美な響きの言葉だろうか。
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