言葉に出して言ってみる。
クイニーアマン。
クイニーアマン。
クイニーアマン。
ヤバいなこれは。
クイニーアマンが一体どんなものかは知らないが、何かカッコいいロボットとかの名前だろうか。クイニーアマンの前に適当な四字熟語を付けておけば、2クールくらいのロボットアニメが作れそうな気がする。
宇宙戦士クイニーアマン。
無双鉄人クイニーアマン。
――これは強い。
どう考えても、強い。
きっと勧善懲悪を基本としつつも、きっちりと敵側のドラマまで描いて一概にどちらが悪とも取れず、敵の美形幹部に女性ファンが数多く付くタイプの奴だ。たぶん社会現象になる。
――ワクワクしてきた。
それにしてもクイニーアマンと連呼していたら、食べてもいないのに口の中が甘くなってきた気がする。
やはり、これはヤバい奴だ。
クイニーアマンこそ神が禁じた禁断の果実なのかもしれない。
……いや違う、果実じゃない。これはデザートだ。断じて水菓子ではない。
僕は頭の中で訂正する。危なかった。もう僕は恥をかきたくない。恥をかいて、クイニーアマンまで嫌いになりたくはないのだ。
頼むから、もう何も僕を裏切らないでくれ。
しかし、それにしても語感が良い。
クイニーアマン。間違いなく声に出して言いたい日本語のトップランカーだと思う。
……いや危ない。たぶん日本語じゃない。
僕は頭の中で慌てて訂正する。二度と同じ轍は踏まない。これは洋菓子だ。断じて日本語ではない。フランスとかベルギーとか、だいたいそのあたりの言葉のはずだ。そんなつまらない思い込みで僕からクイニーアマンを奪わないでほしい。本当に危なかった。
しかし、もはや僕の頭の中はクイニーアマンで一杯だ。
どこで売っているんだろう。
気になって気になって、仕方がない。
僕はスマートフォンで少し調べてみた。
――洋菓子店、またはパン屋で売っているらしい。
……パン屋?
まさかパンなのか、クイニーアマンは。
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