想いを繋げ、カムチャッカ②

想いを繋げ、カムチャッカ



 

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 僕は少し考える。

 ……さっき『日本有数の』とか思ってしまった気がする。

 しかし、そもそも日本ではなかったようだ。

 言葉の響きは北海道あたりのそれなので、僕はてっきり北海道のどこかだと思い込んでいたわけで。

 ――なんだか恥ずかしくなってきた。

 つまり僕は日本のものでもないものを、日本有数の、とか思っていたわけだ。

 別に誰かに語ったわけでもないけども、僕は恥ずかしくて嫌になる。

 あと、よくよく調べてみると、そもそもカムチャ『ッ』カなのかカムチャ『ツ』カなのかはっきりしない。

 もしカムチャ『ツ』カが正式なものであれば、これはもうダメだ。全然語感がよろしくない。

 僕がときめいたのはカムチャ『ッ』カであって、カムチャ『ツ』カではないのだ。つまりこれは僕の心に対する裏切りであって、決して許すことはできない。

 となると、途端にカムチャッカに対する興味は失せる。むしろ僕に恥をかかせ裏切った半島などに用はない。

 そもそも寒い所に行きたいのであれば、暖房を切って紅茶でも啜っておけばいいのではないか。

 それだけで極北感は出る。それでいいはずだ。僕はそれ以上、何も望まない。

 そう考えていると無性に紅茶を飲みたくなったので、僕はキッチンの戸棚からティーパックを取り出し、紅茶を淹れた。

 紅茶を淹れ、ふとパックのラベルを見てみる。

 オレンジ・ペコー(セカンド・フラッシュ)

 ……なんて素敵な響きの言葉だろう。



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