「じゃあ暫くは勇者が来ないってこと?」
魔王は溜め息混じりに秘書に確認する。
「まぁ、そうですね」
「じゃあ僕の活躍の場は、どこにあるんだろう?」
魔王は相談した。秘書は少し考えてから答える。
「そうですね……アレはどうですか? たまに中盤過ぎくらいに人間に感化されて、人間と共に戦っちゃうタイプの魔王とかいるじゃないですか。アレ、結構熱いですよね、相当な見せ場作れますし」
「……やっちゃう?」
そういえば、その手があった。魔王はまんざらでもない。
「います? そういう人間と共通の敵みたいな奴」
「今まで言ってなかったけど、僕の上には大魔王がいる」
魔王は正直に言った。
少し間を空けて秘書が返す。
「え……マジですか。知らなかった」
秘書は少し驚いている。
「じゃあ私は魔物達のトップの秘書じゃなくて、ただの中間管理職の部下だったんですか」
秘書は不満そうに言う。
魔王は慌てて謝る。
「ごめん、実はそうなんだ。わりと大魔王のことは秘匿事項なので、黙ってた。ごめん」
話の流れで中間管理職という立ち位置を暴露してしまったことを、少し後悔した。
「別にいいですけど……なんか私のランクが下がったみたいで、正直ガッカリしてます。魔物界のナンバー2的なポジションだと思ってたのに、実際の格付けは中堅くらいだったわけですね。別にいいですけど」
たぶん別に良くは無いんだろうな、と魔王は思いつつ、もう一度心の中で謝った。
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