空想未来少年リターンズ⑤

空想未来少年リターンズ



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 とにかく調べる時間を稼ぐ。

 となると、僕の返事はこれしかない。

「ほう……お前もそんなことに興味を持つ年になったか。後でゆっくり語ってあげるから、取り敢えず風呂にでも入っておいで」

 ばっちり決まった。

 文句が言えるものなら言ってみろ。

「はぁい……」

 息子は大人しく浴室へ向かっていった。聞き分けが良いことが、この子の最大の長所なのかもしれない。

 僕は急いでスマートフォンを開く。

『インフェクションスプレッド……感染拡大のこと』

 ……危ない単語だった。

 どうしよう。

 語ってやる、とか言ってしまった。

 どう考えても10歳の子供と語る内容ではない。

 と言うより、感染拡大に関して何を語れというのだろうか。『感染拡大って危険だよね』とでも言うのか? いや、浅すぎるにも程がある。その浅さを肴に僕は見下されるに決まっている。

 いや、しかし、そもそも何故あの子はこんな単語に興味があるんだ? 危ない奴なのか? 何らかの感染拡大を画策しているのか?

 どうしよう。今まで僕は平和に生きてきたので、危ない奴との接し方がよくわからない。まさか自分の息子が危ない奴だとは思ってもみなかったので、正直困る。天才で危ない奴だとか、本意気で危険な奴じゃないか。どうしよう、我が子がマッドサイエンティストの卵だった時の対処法なんて、スマートフォンも教えてくれないぞ。

 あと、感染拡大に興味がある10歳児とどうやって団欒すればいいんだろう。すごく困るし、すごく辛い。世の中に対して、すごく申し訳ない。

 暫く悩んでいると、息子が風呂から出てきた。

 僕は恐れおののく。

「……あのさ、お父さん」

 もう、やめてくれ。



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