空想未来少年リターンズ③

空想未来少年リターンズ



前ページ

 

 くだらないこと、とか言ってしまった。

 

 全然くだらないことではなかった。むしろその興味を伸ばしてあげたい。やってしまった。

 いや、しかし、これは世界史の人物だ。何故10歳の子供が世界史の用語を知っていたのか。中学か高校の知識ではないのか。つい最近までは、あのゲームがどうとか、この漫画はどうだとか、そんな事しか言っていなかった気がするのに、突然どうしたんだろう。

 

 ……もしかして、あの子は頭がいいのか?

 

 そうとしか考えられない。突然ヘロドトスとか言い出す10歳児なんて、頭が良いに決まっている。

 どうしよう。僕は今まで中の下くらいの頭脳で生きてきたので、頭の良い人とどうやって接していいかがわからない。まさか自分の息子が頭の良い人だとは思ってもみなかったので、正直困る。頭の良い人と何を喋ればいいんだろう。すごく困る。

 いや、しかし、僕は出張も多くあまり息子に構ってあげられない時もあるのだが、僕の知る限りでは、あの子の学校の成績はそれこそ並だったはずだ。たまに遊んであげる時も、ゲームと漫画にしか興味を持っていなかったと記憶している。

 どういうことだろう。学力って突然覚醒するものなのだろうか? それとも何かの間違いなのか? できれば間違いであってほしい。頭の良い人と何をどうやって接していいかがわからない。自分の息子とどう接していいかがわからないなんて、どうすればいいんだろう。

 

 15分程だろうか。暫く悩んでいると、息子が子供部屋から出てくる。

「宿題、終わったよ」

 

 ……早い。

 やはり天才なのか。

 

 これは良くない。

 いよいよもって、息子との向き合い方を考え直さねばならないようだ。


次ページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました